[06]どうやって遺言書を作るのでしょうか

平成25年11月25日

弁護士  藤野 恵介

答え

公証役場を利用してください

1 遺言書の作り方

「遺言書を作ろうと思うのだが何をすればいいのかわからない。自分で書けばよいのか。」という質問をいただきます。それに対して,私を含むほとんどの弁護士は,「自分で作るのではなく,公証役場へ行って,公証人に公正証書遺言を作ってもらってください。」と答えます。

2 遺言書の種類

遺言書には,自分で作る「自筆証書遺言」と,公証人に作ってもらう「公正証書遺言」とがあります。

3 自筆証書遺言の落とし穴

安価かつ手軽ですが,おすすめできません。そもそも,必要な形式を備えていないものが多々あります。この場合,ただの日記やメモとしてしか扱われなくなります。せっかく一念発起して遺言書を作成したにも関わらず,自身の思ったような効果が生じないというのは残念なことです。他方,形式を備えていても,自筆証書遺言は,相続発生後に検認手続が必要となります(民法1004条)。検認手続には相続人全員の戸籍の収集及び相続人全員への連絡等が必要であるため,なかなか遺産の処分に取り掛かれません。

4 公正証書遺言のすすめ

公正証書遺言は,公証役場にて公証人が作るものです。形式について問題は生じません。検認も不要です。3部作成し,原本は公証役場で保管してくれます。さらに,遺言書が保管されているかどうかは全国どこの公証役場からでも検索可能です。もちろん,公証役場へ支払う手数料はかかりますが,数万円程度です。具体的な金額は,お近くの公証役場へお問合せください。

5 弁護士の活用法

公証人の本来の仕事は,こちらの作成した案を公正証書にすることです。したがって,公証人は,簡単な相談にはのってくれますが,複雑な遺産分割方法について相談にのってもらえるかどうかはわかりません。公証役場へ持参する案の作成は,弁護士に依頼していただきたいところです。簡単な案の作成なら10万円,複雑なものでも30万円ほどでご依頼いただけます。

6 遺言信託というもの

信託銀行でも遺言が扱われています。銀行に任せておけば,相続発生後にすみやかに預金の処分等ができるというメリットがあります。ただし,信託銀行は争いごとに関与できませんので,遺言執行段階で争いごとが生じれば,弁護士に依頼することになります。その際,弁護士費用は別途かかります。また,公正証書遺言であれば原本を公証役場で保管してもらえますので,銀行に保管してもらう意味はありません。このような知識をもったうえで,検討することが必要でしょう。

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。