[02]弁護士に何を依頼できるか(前編)

平成25年7月30日

弁護士  藤野 恵介

答え

誤解を恐れずに言いますと,何でも依頼できます。

弁護士の仕事

誰かと争う場合をイメージされるかもしれませんが,役員就任,不動産の賃貸・賃料回収等の財産管理,後見人就任,契約書チェック&交渉,法律・制度の調査からはじまり,講演,よろず相談,執筆活動,身の回りの世話まで何でも受け付けています。このような仕事を一切せず,裁判のみを仕事にしている弁護士は,ほとんど居ません。たしかに,保険会社の顧問をしているような弁護士は,保険金請求への訴訟対応が仕事の大半を占めるのかも知れませんが,そのような弁護士はごくわずかです。

「何でも依頼できる」という意味

弁護士には何でも依頼できると述べました。当然と思っている方もおられるかもしれませんが,実は,何でも仕事として受けることができるというのは,弁護士の特権です。知名度の低い法律ですが,弁護士法というものがありますのでご紹介します。

弁護士法上の禁止規定(非弁行為の禁止)

第72条「弁護士…でない者は,報酬を得る目的で訴訟事件,非訟事件…その他一般の法律事件に関して鑑定,代理,仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い,又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし,この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は,この限りでない。」

←事件屋というのはこの規定に違反します。事件屋の言い分としては,自分は「業」として介入しているのではないというのでしょう。交通事故やご近所トラブルにおいて,当事者以外の第三者が介入し,かつ,それが弁護士でない場合,非弁の可能性があります。得体の知れない第三者が介入した場合,「非弁のおそれがあるので,貴方とは交渉できません」と突っぱねていただきたいと思います。

第73条「何人も,他人の権利を譲り受けて,訴訟,調停,和解その他の手段よって,その権利の実行をすることを業とすることができない。」

←この規定により,他人の権利を譲り受けて自分の権利であるという形をとったとしても,非弁にあたります。

第74条「1項 弁護士…でない者は,弁護士又は法律事務所の標示又は記載をしてはならない。2項 弁護士…でない者は,利益を得る目的で,法律相談その他法律事務を取り扱う旨の標示又は記載をしてはならない。」

←よく「法事務所」という名称を目にしますが,それは,この規定第1項により,「法事務所」という名称を弁護士以外が使うことは禁止されているからです。また,「法律相談無料」という広告も目にしますが,それは,有料にすると,この規定第2項に反するからです。

次回は,非弁行為についての罰則規定からご紹介します。

なお,上記弁護士法72条には「他の法律に別段の定めがある場合」についての例外があり,例えば,司法書士,行政書士,社会保険労務士,弁理士,税理士等には,厳密に範囲が制限されてはいますが,一定の範囲で代理等をすることが法律上認められています。