[12]訴状を受け取ってから裁判まで

平成26年5月23日

弁護士   藤 野  恵 介

答え

とにかく放置しないことです。

1 訴状が届く

前回から引き続き,労働者から訴訟提起された場合の流れについて述べます。まず,訴状が会社に届きます。訴状が重要なのは当然ですが,訴状に同封されている連絡書が重要です。そこには,第1回弁論期日(←民事裁判における裁判期日のことを弁論期日といいます。)が記載されています。うっかりこの日を忘れて弁論に欠席してしまうと,俗にいう欠席裁判で労働者の主張が全て認められてしまうことは,前回述べました。ただ,あちらの都合で平日昼間に勝手に弁論期日が指定され,それに欠席すれば直ちに敗けるというのではあまりに理不尽ですので,最初の弁論期日に限り,書面提出をもって出席に代えられます(陳述の擬制,民事訴訟法158条)。弁護士も,答弁書の提出のみ行い,自身は欠席することが多いです。

2 答弁書の提出

訴状に対して,こちらが最初に提出する準備書面(←主張をまとめた書面を準備書面といいます。)を答弁書といいます。訴状に同封されている連絡書に答弁書の提出締切日が記載されています。通常は,1ヶ月半ほど先の日が締切日とされます。答弁書の内容が充実しているに越したことはないのですが,通常は,訴状が届いてから弁護士に相談しますので,時間が足りません。そこで,答弁書には争う旨のみを記載し,詳しい反論については次回弁論に回します。繰り返しになりますが,争わなければ相手方の主張を認めたことになりますので,とにかく争う意思を明確にすることが必要です。

3 第1回弁論期日

通常は,答弁書提出締切日から約1週間後が第1回弁論期日とされます。答弁書を提出しているので欠席してもいいのですが,私の場合,極力出廷することにしています。その場で次回弁論期日の日程調整をしやすいという理由もありますが,それよりも主な理由は,詳細な反論をする前に何となく相手や裁判官の雰囲気を見ておきたいからです。弁論期日後の相手方との挨拶の際に,話ができることもあります。

4 弁論期日にすること

誤解されがちですが,民事裁判の場合,弁論期日は5分ほどで終わります。お互いの主張は、弁論期日の1週間前に,準備書面の中でまとめて主張していますので,法廷では今後の方向性を打合せるのみです。ですので,民事事件を見学に行っても全く面白くありませんのでご注意ください。

もし裁判見学をご希望でしたら,気軽にお問合せください。傍聴は自由にできますが,多少なりとも解説がある方が有意義だと思います。

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。