[15]中小企業経営者が事業承継を考えるきっかけ

平成26年8月22日

弁護士   藤 野  恵 介

答え  遺言書作成に似ています。

1 告知

前回まで,労働問題の訴訟リスクを把握していただこうと,訴訟の流れについて述べてきましたので,ある程度はイメージしていただけたかと思います。続きまして,訴訟とは異なる労働審判にかかる手間について述べる予定でしたが,事業承継についての関心があるとの意見を頂戴しましたので,訴訟リスクについては後日述べることにします。このように,ご意見をいただければ柔軟に対応いたしますので,どしどしお寄せください。

2 事業承継とは

何を想定されるでしょうか。参考に事業承継関連のホームページを参照すると,事業承継として想定されるのは,概して株式問題,税金問題及び後継者問題とされています。この分野は,主に公認会計士,税理士,中小企業診断士がコンサルという名で担当しているようです。

3 弁護士は後進

私も含め,ほとんどの個人経営の弁護士は,丸ごと仕事を受任することに慣れていません。どちらかといえば個別の問題を各個撃破することに慣れています。一つの事件での経済的利益を算定し報酬を計算することには慣れていますが,丸ごと受任しても報酬の額も計算できません。私の場合,とりあえず,通常より少し高めの顧問料をいただき,毎月継続的にミーティングを入れる形にします。

4 ライバルはコンサル

コンサルは,パッケージとして商品を提案することが得意です。自身は資格がなくとも仕切ることはできます。コンサルは,まずは依頼者から丸ごと受任し,必要と考えた時に弁護士に処理させるのだと思います。これは,最近目にする遺言信託サービスに似ているように思います。銀行等は,遺言信託サービスとして遺言執行等をパッケージで受任し,いざ紛争が生じた場合には弁護士へ振ります。弁護士費用は別途発生します。いわゆる遺言コンサルも同様です。

5 弁護士の活用法

事業承継に関連する相談を受けるのは,経営者亡き後の事後的な個別処理ばかりです。その意味では,事業承継に関する相談ではありません。せめて遺言書を残してくれていれば円滑に事業が承継できたのにと思う事例がほとんどです。欲を言えば,前経営者が健在なうちに中小企業経営承継円滑化法等をうまく利用していれば,より円滑な事業承継ができたのかも知れません。その意味で,弁護士は,何の対策もせずに経営者が亡くなることにより生じる不幸を身をもって知っています。事後的にだけではなく事前にも活用してみてはいかがでしょうか。

6 中小企業庁

事業承継関連本を閲覧してみましたが,もっとも信頼できるのは中小企業庁のホームページでした。そこで,次回は,同ホームページを引き合いに関連制度につき述べたいと思います。

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。