[16]事業承継を考える際に参考になるサイト

平成26年9月25日

弁護士   藤 野  恵 介

答え  中小企業庁のサイトはいかがですか。

1 中小企業庁とは

中小企業庁は,「中小企業を育成し、及び発展させ、且つ、その経営を向上させるに足る諸条件を確立する」(中小企業庁設置法第1条)を達成することを任務としています。経営者の皆さんは,日々の経営に注力され,なかなか法制度まで手が回らないかと思います。そこで,私なりに同サイトの要約を試みたいと思います。

2 中小企業者とは

基本的に,製造業の場合,資本金3億円以下又は従業員300人以下,卸売業の場合,1億円以下又は100人以下の会社です。上場会社等は,基本的に対象外です。

3 中小企業経営承継円滑化法

同法の柱は,①遺留分に関する民法の特則②事業承継時の金融支援措置③事業承継税制の3本です。このうち,②③は税理士が説明する方が良いでしょう。弁護士の立場からは,①が重要です。

4 遺留分とは

特例が特例たるゆえんを説明するためには,遺留分についての説明が必要でしょう。遺留分とは,要するに,遺言によっても犯しえない一定の持分です。そもそも遺言は,自己の財産をどのように相続させるかを決めるもので,遺言作成者が自由に内容を決められます。したがって,不平等な内容であろうと,遺言のとおりに遺産は分割されます。しかし,それでも兄弟姉妹以外の相続人は,相続開始後に遺留分減殺請求権を行使することにより,自分に確保された一定の持分を求めることができます(民法1028条,1031条)。

5 特例の必要性

遺留分減殺請求権が行使されると,いったん遺産分割された財産が,一定の持分を侵害する限度で巻き戻されます。それにより,例えば,父親が2人兄弟の長男に事業を継がせ,長男に株式等全てを譲るべく生前贈与または遺言作成していたにも関わらず,父親死亡後に,経営者とならなかった弟が遺留分減殺請求権を行使すると,一部が弟のものとなる事態が生じてしまいます。また,父親から自社株式を生前に譲り受けた長男の努力により株式の価値が上昇したにも関わらず,父親死亡時の価値を基準に遺留分が計算されてしまうことにもなります。なお,相続人に対する生前贈与は,相続開始の相当以前にされたものであっても,遺留分減殺請求の対象になるというのが判例です(最判平成10・3・24民集52-2-433)。

6 特例の内容

相続人予定者全員の合意により,自社株式や持分を遺留分減殺請求の対象から除外することを認めました。これを「除外合意」といいます。また,遺留分の算定にあたって,自社株式の価値を相続開始時の価値ではなく生前贈与時の価値で算定することも認めました。これを「固定合意」といいます。細かい要件等について,引き続き述べます。

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。