[21]交通事故処理の具体的イメージ

平成27年02月24日

弁護士   藤 野  恵 介

答え  後遺障害認定まで

1 具体例

前回,交通事故に遭われた際に,示談書へ署名押印する前に弁護士に相談すべき理由を述べました。今回は,もう少し具体的に,事故に遭われた後の流れを追ってみます。なお,当事者双方とも任意保険に加入しているという前提です。

2 事故直後

事故発生時,まずは,警察に現場を確認してもらいます。交通事故証明書を作成してもらうためです。事故証明書には,大まかな事故態様,相手方の連絡先及び任意保険加入の有無等が記載されます。弁護士としては,交通事故証明書をみると状況が把握できますので,最初の相談でこれを確認します。

3 交渉相手

損害賠償義務者は加害者本人ですが,支払うのは加害者側保険会社です。したがって,支払金額に最も利害関係があるのは加害者側保険会社です。そのため,当事者ではなく,加害者側保険会社の担当者が全面的に交渉相手となります。保険会社の担当者は,当事者同士の接触を嫌います。当事者同士で直接話をさせると,話がこじれることが多いからです。極端な場合,加害者本人が被害者本人に対して直接謝罪したいという意向でも,加害者側保険会社で制止する場合もあります。これが却って被害者感情を逆なでし,話がこじれる原因になることもあります。

4 通院中

通常,通院中の治療費は加害者側保険会社が立て替えます。ただし,いつまでも立て替えてもらえるわけではありません。加害者側保険会社内部の運用で,治療費立替基準がありますので,それを超えるようですと,治療を中止するように指導してきます。

5 症状固定

症状固定後,後遺障害の有無を検討することになります。症状固定とは,治療の効果が認められなくなった状態をいいます。治療により完治すれば言うことはないのですが,完治せずとも治療の効果が出なくなると症状固定という判断がなされます。症状固定時に治療は終了し,あとは後遺障害が残るかどうかが問題になります。言い換えれば,症状固定時以降は治療費という形でのお金のやり取りは終わり,後遺障害等級に応じた慰謝料及び逸失利益という形のお金のやり取りに形を変えます。

6 後遺障害認定

症状固定後に,その時点で後遺障害が残っているかどうかを主治医に診断してもらい,後遺障害診断書を作成してもらいます。それを後遺障害等級認定機関に提出し,後遺障害等級を認定してもらいます。後遺障害等級で何級がつくかは,慰謝料及び逸失利益の金額に大きく影響しますので,後遺障害診断書には,気になる症状を漏らさず丁寧に記載してもらってください。

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。