[22]交通事故処理の具体的イメージ(その2)

平成27年03月25日

弁護士   藤 野  恵 介

1 はじめに

前回から,皆様またはその家族の皆様が不幸にも交通事故に遭われた際,どのような流れで処理が進んでいくかを出来るだけ具体的に追ってきました。前回,後遺障害診断書作成までにつき述べましたので,その後について述べます。

2 後遺障害の影響

後遺障害が認められないということは,症状固定時に治療は終了し,症状固定時の「後」に「遺」る「障害」がないということですので,症状固定時を基準時として損害額が確定するのは当然です。他方,後遺障害が認定されるということは,症状固定時の「後」も「遺」る「障害」があるということですので,症状固定後の損害についても考慮されることになります。したがって,後遺障害等級が認定されると,それに応じて逸失利益及び後遺障害慰謝料が別途算定され支払われます。

3 逸失利益

逸失利益の計算方法は,おおまかにいえば,労働能力喪失率×基礎収入×労働能力喪失期間です。後遺障害により収入が減額した部分を,平均の日本人なら労働できたであろう期間分計算することになります。ここでいう労働能力喪失率が後遺障害等級により決まっており,1番下の14級の場合5%,13級の場合9%です。例えば50才の主婦の膝に掌大の醜傷が残った場合,大まかに,5%(14級)×350万円(主婦の基礎収入)×11(終了可能年数17年分の係数)=192万円が逸失利益になります。

4 後遺障害慰謝料

こちらは,等級により金額が決まっています。1番下の14級の場合110万円です。

5 まとめ

このように,後遺障害が認定されると,症状固定日までの入通院実費,休業損害及び入通院慰謝料等が支払われたうえに,後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料等が別途支払われます。他方,後遺障害が認定されなかった場合は,症状固定日までの入通院実費,休業損害及び入通院慰謝料等が支払われるのみで終了します。あらためて,後遺障害認定の重要性が感じられるところです。実際に,このような形式的な区別のせいで,見込んでいた金額を受け取れなかった依頼者もたくさんいます。本来,後遺障害がのこらないことの方が幸せなはずですが,なかなかそうは考えられません。

6 弁護士利用法

以上のとおり,後遺障害等級が認められるか否かは,ケガの態様次第です。しかし,弁護士に依頼して,担当医が診断書作成する際に注文を付けてもらうことができます。また,後遺障害のない場合であっても,入通院慰謝料の金額について保険会社と交渉してもらったり,訴訟してもらったりすることもできます。とりあえず相談するだけでも弁護士を利用するべきです。

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。

 

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