平成27年07月27日
弁護士 藤 野 恵 介
答え 協議の場と考えてください。
1 裁判沙汰とは
法律相談を受けていると、「裁判沙汰はちょっと避けたい」「裁判沙汰は情けない」などという発言を耳にします。本来裁判沙汰とは、裁判所で訴訟事件として取り扱われることを意味します。しかし、どうやら相談に来られる方にとっては、調停も何もかも含めて、裁判所の関与する手続は全て「裁判沙汰」のようです。
2 誤った認識
裁判沙汰になることは、情けないことなのでしょうか。どうやら、自分たちで揉め事を解決できずお上の判断に委ねることが情けないと感じる方がおられるようです。また、自分で揉め事を解決できないような企業を情けない企業であると感じる方もおられるようです。しかし、そのような感覚は過去のものとなりつつあるのではないでしょうか。
3 正々堂々と
私の目からみれば、自分たちでこそこそと、豪腕を用いて、あるいは、偉い人に任せて解決する傾向にある企業の方が、よっぽど信用できません。後ろめたいところのない企業は、裁判所を使うことを恐れません。却って、絶対に妥協できないという線を引いて、その線の内側で解決できない場合には裁判所で解決するものです。
4 出る必要
実際、法律相談を受けていても、相談者が必要以上に妥協している場合があります。そこまで妥協する必要があるほどの落ち度があるのかと問うと、そこまでの落ち度はない場合がよくあります。そのような相談者は、自分が妥協してでも丸く収まればそれでよいと考えるようです。また、そういう相談者は、決まって、相手方に「出るとこに出ても良い」という脅しをかけられています。特に後ろめたいところがないのでしたら、出るとこに出るべきです。
5 裁判のすすめ
過去に当コラムにて触れましたとおり、裁判所で行われるのは訴訟のみではありません。また、訴訟であっても、直ちに判決となる事案は少なく、通常は和解に向けた協議が行われるものです。したがって、裁判沙汰は、単に白黒をつける場ではなく、協議の場であると言えます。しかも、その協議には裁判所が関与しますので、法的に通るはずのない「難癖」は排除されます。
6 弁護士の関与
先ほどのように不当な妥協に応じかけている相談者からの依頼は、気分的には受けやすいものです。なぜなら、そのような依頼者の案件は、実際にはそこまでへりくだる必要がない場合が多いですし、また、そのような依頼者は、ある程度の支払を覚悟しているので話をまとめやすいからです。実際に弁護士に依頼するかどうかは別として、一度相談してみることが重要です。
※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。