平成27年09月24日
弁護士 藤 野 恵 介
答え 収集及び管理の方法です。
1 はじめに
何とも表現しがたい焦りに駆られている方々もおられるのではないでしょうか。私も、某企業の中小企業経営者向けセミナーを受けたり、総務省のホームページを閲覧したりしています。
2 キモ
率直に申しますと、中小企業経営者にとってのキモは、従業員のナンバーの収集及び管理の方法です。
3 収集の困難さ
わかりやすい例を挙げますと、源泉徴収票に従業員のナンバーの記載が必要になります。ということは、給与支払までに従業員のナンバーを従業員から聞き出す必要があるということです。容易に想像できると思いますが、従業員の中には、自分に届いた郵便物の内容を確認せずに処分してしまう方もおられます。そのような従業員は、自分にナンバーを知らせる通知がきたことすら認識していません。従業員全員から漏れ無く速やかにナンバーを聞き出すことは至難の業です。
4 管理の困難さ
ナンバーは、クレジットカード番号同様の機密情報であると言われています。しかし、一度付与された番号が一生変更できないという点からみれば、その重要性はクレジットカードと比較になりません。これだけ重要な機密情報を、会社は管理しなければなりません。源泉徴収票を作成するために従業員全員のナンバーを管理しなければなりません。ナンバーを管理するパソコンを1台にしぼり、かつ、鍵のかかるロッカーで保管するといった方法が推奨されていますが、絶対に漏れないように管理することは不可能でしょう。
5 番号付与の時期
間もなくです。平成27年10月よりナンバーを記載したものが国民全員に送られてきます。おそらく、自分にそのような重要な通知が届くということを知らない従業員がほとんどでしょう。そして、平成28年1月より支払われる給与の源泉徴収票等には支払先である従業員のナンバーを記載することになっています。
6 実際の運用
某セミナーでは、システム会社が社内セキュリティ強化の必要性を訴え、社内に新たなシステムを導入すべきという指南がなされていました。しかし、そのような準備のできる中小企業はほとんどないのではないでしょうか。実際には、ナンバーの収集が追いつかず、ナンバー記載欄を空欄にしたままで源泉徴収票を発行する企業が多いと思います。その場合に、国は、どのような対策をとるのでしょうか。
7 対処法
総務省及び国税庁のホームページに、よくある質問への回答として、ナンバーの収集ができなかった場合の対応が指示されています。それによりますと、ナンバーの提供を受けられなかった経過を記録しておかねばならないようです。その際、マイナンバーの記載がないことをもって税務署が書類を受理しないということはないという説明がなされています。
※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。