[30]建築紛争の相談相手は?

平成27年11月25日

弁護士   藤 野  恵 介

答え  最終的には弁護士です。

1 建築紛争とは

最近、私が力を入れている分野に建築紛争があります。建築紛争とは、例えば、ハウスメーカーに注文住宅を注文したが注文どおりに工事が行われていない場合の施主と請負業者との争いや、注文住宅工事が完了したが雨漏りがある場合の施主と請負業者との争い、または、立替工事の際に旧建物解体工事をしたところ地盤沈下した場合の施主と請負業者と近隣住民との間での争い等です。

2 専門家の関与

私は弁護士であり、建築士ではありません。したがって、設計図を見ても、実際の工事を見ても、完成した建物を見ても、どこに問題があるのか判断できません。問題点の発見と、それが業界の常識としてどの程度重大な問題であるのかを判断するには、専門家の力を借りるほかありません。

3 弁護士の仕事

私の仕事は、専門家の力を借りたうえで、相手方を選択し、協議の場を設定し、その協議の場において依頼者の主張を代弁することです。ここでいう代弁は、単なる伝書鳩になることとは異なります。協議の場では、裁判所であれADR(裁判外紛争解決手続←前号参照)であれ、仲介役が存在します。弁護士は、その仲介役が理解しやすいように依頼者の主張を整理し、さらに法律上の根拠があることも仲介者に理解させなければなりません。ここが、弁護士が代弁する大きなメリットです。

4 協議の場

最終的には訴訟になりますが、訴訟以外にも協議の場はあります。まずは当事者同士での話し合いという方法がありますが、私が相談を受ける段階では、既に話し合いが決裂している場合が多いです。次に当事者だけでなく第三者の仲介の下で協議を行うことになります。選択肢としては、裁判所を利用した協議の場として建築調停が挙げられます。他方、裁判所を利用しない協議の場(ADR)として民間総合調停センターや住宅紛争審査会での調停が挙げられます。それぞれ、仲介役が裁判官であるか否かが大きく異なりますし、専門家の関与の態様も大きく異なります。弁護士は、このうちのどの協議の場を選択するかを検討することになります。

5 専門性

前述のとおり、建築紛争に取り組むにあたって専門知識が必要であるのは当然です。しかし、これは建築訴訟に限ったことではありません。仮に印刷機に不具合が生じた場合には、印刷機の知識が必要です。その際には、印刷機の専門家の知識を借ります。弁護士は、専門家の知識を借りながら、多様な分野の紛争を解決すべく努力しています。大切なのは、信頼できる専門家との人脈です。

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。

 

今回の記事をPDFファイルでご覧いただけます。

icon_pdf_small [30]建築紛争の相談相手は?

get_adobe_readerPDF形式のファイルをご覧いただくには、アドビシステムズ社から無償提供されているAdobe® Reader® プラグインが必要です。「Adobe® Acrobat®」でご覧になる場合は、バージョン10以降をご利用ください。スマートフォンでご覧の方も、対応アプリをダウンロードしていただけます。