[32]弁護士に相談するほどのものか

平成28年1月19日

弁護士   藤 野  恵 介

答え それを含めてご相談ください

1 弁護士の敷居

先日、いつもお願いしている美容師から、「弁護士に相談するほどの問題なんてないなあ」と言われました。多数の弁護士は、近年、弁護士の敷居が下がっていると感じているようですが、それは弁護士の勘違いのようです。先の美容師にとって、まだまだ弁護士は、小さいことを気軽に相談していいような存在ではないようです。

2 弁護士の営業

近年、弁護士の人数は増えました。若い弁護士が世に溢れ、弁護士が増えた結果、弁護士業界も競争が激しくなり、法律相談を無料にする弁護士が増え報酬基準も低額になった。これが多数の弁護士の認識であると思います。私は、弁護士の敷居は下げるべきであるが、報酬基準を下げるのは良くないと考えています。それについては最後に述べるとして、それにしても、おそらく我々弁護士が思っているほど弁護士の敷居は下がっていないのだと思います。

3 相談するほどか

先の美容師も、弁護士に相談するほどのことはないと言いながら、よくよく聞いてみると、実は客の中にクレーマーと思しき方がいたり、離婚した同業者がいたり、交通事故に遭った友人がいたりしました。

4 早めの相談

弁護士からすれば、本当にこじれてしまう前に相談を受けたいと思っています。訴訟に至る前、具体的には相手方とのやり取りをしている時点で相談を受ければ、いくらかの解決金で終わらせたほうが費用対効果の点で効率がいいという助言ができるからです。また、最終的に訴訟に至るのが致し方ないような事案であっても、相手方と連絡がとれている状況で相談を受ければ、証拠収集の機会も増えるかもしれません。特に離婚事件では、同居中に相手方の動向を記録しておくことが後々役立つことが多々あります。

5 敷居は下げる

こうしてみると、やはり、弁護士に相談すべき案件なのかどうかは弁護士でないと判断できません。そこを含めて相談できるように、敷居を低くする必要があります。ただ、これは前述のとおり、報酬基準を下げることとは同義ではないと考えています。とにかく最初の相談をしやすいように初回相談料を無料にしたり、法律相談会を実施したりすることで敷居を下げ、弁護士が関与して役立てる事案であれば積極的に受任すべきです。しかし、法律相談を無料にしたから報酬基準も下げるというのではなく、弁護士が関与すべき事案であれば、相応の報酬基準で受任すべきです。弁護士の仕事は、薄利多売という営業方法をとるには限界があると思います。

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。

 

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