平成28年2月19日
弁護士 藤 野 恵 介
答え 最後は裁判所で話し合います
1 遺産分割不要?
遺産分割とは,亡くなられた被相続人の遺産を相続人間で分け合うことを言います。遺産が普通預金のみの場合は,各相続人の法定相続分に従って当然に分割されますので,わざわざ遺産分割しなくとも,各相続人が銀行に自分の法定相続分を請求することで回収できます。ただし,銀行は、訴えられない限り任意に支払には応じないことが多いですので,訴訟は提起せねばなりません。
2 遺産分割必要?
他方,遺産が普通預金だけではなく,定期預金,株式または不動産が含まれている場合,各相続人では何も動かすことができませんので,遺産分割が必要です。この場合,相続人全員の協力が必要になります。
3 遺産分割方法
弁護士法の規制により,弁護士は相続人から委任を受けて裁判所を利用することができますが,他の資格ではできません。そこで,主に弁護士以外の資格者が利用する手段が遺産分割協議書の作成です。これは,遺産分割の内容を書面にして,相続人全員が署名押印し,相続人全員が印鑑登録証明書を付けることで完成します。この協議書があれば,相続人のうちの誰か一人でも,協議書を窓口に持参することによって,定期預金または株式の換金若しくは不動産の処分または登記等ができます。
4 協議書の難しさ
遺産分割協議書作成には相続人全員の署名押印及び印鑑登録証明書が必要です。相続人が複数人いる場合,そのうちの数人分を揃えても,最後の一人が協力を拒んだ場合,途端に頓挫します。途中で紛失しても頓挫します。
5 裁判所での調停
このように,遺産分割協議書作成はなかなか根気が必要です。弁護士は,協議書作成に挫折した方から依頼を受けることがよくあります。その場合は,既に相続人のうちの誰かからの協力が得られないことははっきりしていますから,あとは裁判所に遺産分割調停を申し立てるほかありません。
6 調停の流れ
遺産分割調停を提起すると,裁判所から各相続人に呼出状が発送されます。相続人のうちの誰かがこの呼出しに応じない場合または呼出しには応じたが調停がまとまらない場合,裁判所が審判をします。これでようやく結論がでることになります。ただし,裁判所の審判では,法定相続分で形式的に分割するという判断になることが多いですので,できるだけ調停の席で,有効活用できる形で遺産を分割したいところです。
7 調停の難しさ
最終的には調停を申し立てるしかないのですが,調停も簡単には進みません。次回は遺産分割調停の難しさについて述べます。
※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。