平成29年6月20日
弁護士 藤 野 恵 介
答え 必ず依頼するべきです。
1 具体例
もし,従業員から,信号待ちしていたところに後ろから追突されたという報告を受けたとします。その際,保険会社に任せておけばいいなどと言わず,弁護士に相談するように助言してください。既に当コラムにて何度も述べていることなのですが,最近も経営者の方に質問を受けましたので,改めて整理します。
2 ご自身で解決
たしかに,弁護士に依頼せずとも,加害者側の保険担当者が対応してくれます。まずは治療費を立て替えて支払ってくれます。したがって,治療にあたっての現金負担がありません。治療が終われば,解決金額の提示をしてくれます。その提示を受け入れれば,解決金が支払われます。このように,現金負担なく治療を受けられ,最終的には解決金を受け取れるわけですから,それだけで十分だと感じる方も多いでしょう。それは素晴らしいことです。
3 自賠責との関係
しかし,保険会社の提案する金額は,あくまでも保険会社内部での支払基準に沿ったものです。この保険会社内部での支払基準は,自賠責保険の支払基準とほぼ同じです。なぜなら,保険会社は,被害者に解決金を支払ったあとには,被害者に代わって自賠責保険から回収します。ここで,保険会社が自賠責保険から回収できる金額よりも支払い過ぎていると,自腹を切ることになってしまいます。そこで,保険会社は,被害者への支払額は自賠責保険から回収できる程度に抑えようとします。
4 裁判所との関係
被害者が加害者を相手に訴訟をすれば,裁判所の認める損害額というのは,自賠責保険の保険金支払基準で計算した金額よりも大きくなる傾向にあります。裁判所が訴訟で認めてくれそうな損害額というのは,ほぼ算定できます。裁判所の算定基準で計算すると,当然ながら,自賠責保険支払基準で計算したときよりも,保険会社内部での支払基準で計算したときよりも,損害額が大きくなる傾向にあります。
5 弁護士の役割
被害者に代わって弁護士が交渉すると,加害者側保険会社は訴訟になることを覚悟し,裁判所で認められる金額に近い金額で解決しようとします。結果として,訴訟を起こさずとも,被害者本人が交渉していたときよりも解決金額が大きくなる傾向にあります。
6 弁護士特約
このように,弁護士に依頼すれば解決金額が増える可能性は高いのですが,いくら増えるかは事案により様々です。そこで,弁護士費用を支払う価値があるか悩むところです。そんな不安を解消してくれるのが弁護士特約という弁護士費用を支払ってくれる特約です。色んな保険に付いていますので,確認してください。
※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。
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