[48]契約締結にあたっての弁護士の使い方

平成29年8月17日

弁護士   藤 野  恵 介

答え 契約内容の翻訳をさせてみましょう。

 

1 弁護士利用法

取引先と新たな契約を結ぶとき,取引先が契約に慣れているから,または,取引先が大企業だからという理由で,契約内容について取引先に任せきりにしていませんか。もちろん,契約交渉から弁護士に任せることはできますし,それはごく普通のことなのですが,交渉まで依頼することに抵抗がある場合でも,契約内容について説明してもらうくらいはしてもらっておいて損はありません。せっかく顧問弁護士がいるのでしたら使わない手はありませんし,顧問弁護士でなくとも,スポットで使うことはできます。「こういう契約を結びたいのだが,交渉窓口になって欲しい」「相手方から契約書の案を受け取ったのだが,内容をかみ砕いて説明してほしい」といった具合に弁護士に相談してみてください。

2 費用面

顧問弁護士であれば,契約内容の説明であれば顧問料の範囲で対応し,別途費用を請求することはないと思います。顧問弁護士でなくとも,契約書を持ち込んで行うその場での相談であれば,通常の相談料で済むはずです。そこから,実際に契約交渉を依頼する場合には,契約規模に応じて契約規模の何%という形で費用が生じます。費用は,遠慮なく弁護士に確認してください。費用から逆算して依頼内容を決めることもできます。

3 具体例

先日も売買契約の内容について経営者Aから相談を受けました。ごく単純な売買でしたので,ご自身で書式を見つけてきて案文を作成しておられました。しかし,その内容についてはあまり理解されていませんでした。こちらからは,「この内容でしたら,あちらの支払が滞ったときにはこういうリスクがありますね」とか「こちらが不具合を黙っているとせっかくの規定が無意味になりますので気をつけましょう」といった回答をしました。

4 翻訳とは

今回は,契約内容を弁護士にかみ砕いて説明させることをもって「翻訳させる」と表現しました。契約交渉の中で,結果として,こちらに不利な条項を飲まざるを得ない場面は多いでしょう。しかし,そのリスクを理解したうえで締結するのと理解せずに締結するのとでは大違いです。そもそも,その契約がリスクに見合う契約なのかという視点も生まれます。

5 結果

結局,上記経営者Aは,自分に不利な条項について削除したものを取引先に提示してみたところ,そのままの内容で締結に至りました。取引先は特に契約内容に関心もなかったようです。

 

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。

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