[51]犯罪加害者だけでなく被害者の弁護もします。

平成29年11月20日

弁護士   藤 野  恵 介

1 はじめに

弁護士の仕事といえば,刑事弁護人をイメージされる方が多いのではないでしょうか。刑事弁護とは,俗に言う加害者を弁護する仕事のことです。他方で,犯罪被害者を弁護する仕事もあります。例えば,傷害事件でケガをさせられた被害者が加害者に慰謝料を請求したいという場合,その被害者のお手伝いをします。

2 請求方法

犯罪被害者が加害者に慰謝料を請求する方法としては,民事訴訟があります。慰謝料を請求するということは,金銭の支払いを求めるということですので,刑事訴訟ではなく民事訴訟です。これと混同されがちなのが示談です。

3 示談とは

以前に交通事故の加害者側について当コラムにて触れたことがあります。示談とは,民事訴訟を先取りして加害者が被害者に慰謝料を支払うことを言います。加害者が被害者に謝罪をして被害弁償をするのは当然なのですが,加害者としては,謝罪するならば早いにこしたことはありません。なぜなら,早く謝罪すれば被害者が許してくれるかも知れないからです。加害者から示談の話が出てくるのはそのためです。

4 弁護士の関与

弁護士は,被害者を代理して民事訴訟を提起します。他にも,被害者を代理して,加害者から示談の提案を受ける窓口になります。示談金額や,示談書の内容としてどのような文言を記述するかを交渉します。被害者が,加害者の謝罪を受け入れたならば,「赦す」旨の文言を記述することもあります。

5 被害者参加

被害者弁護としては,加害者の刑事裁判に参加するという仕事もあります。これを被害者参加といいます。これまで,刑事訴訟は,検察官が加害者を訴追する手続であり,被害者が蚊帳の外でした。これを改め,一定の事件については,被害者が検察官の横に座って裁判に参加することができるようになりました。これにより,被害者は事件の内容を詳しく知ることができるようになり,直接法廷で意見も言えるようになりました。

6 損害賠償命令

一定の事件については,加害者の刑事訴訟が終わった後,そのまま民事訴訟を行うことができるようになりました。この制度を利用すると,刑事訴訟で加害者の刑罰を決め,その後,その法廷で,被害者が加害者に慰謝料請求訴訟を提起することができます。これにつきましても,弁護士が代理して行うことができます。被害者弁護のひとつです。

 

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。

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