平成29年12月20日
弁護士 藤 野 恵 介
1 謹賀新年
今年も宜しくお願いします。少しでも皆様の役に立つ情報提供ができればと思っています。
2 年末の相談
昨年末に,遺言や後見に関する相談をたくさん受けました。年末年始で親族が集まる機会が増えることもあり,家族のことを考える機会が増えるからでしょう。
具体的な相談内容の一例を挙げます。今は母が施設で暮らしており自分が話し相手をしているが,母の認知が進んだ場合,費用は自分が負担しなければならないのか。相続の際には,自分が母の相手をしていたという事情は考慮されるのか。母と同居していた家は自分のものになるのか。
3 遺言について
まず,お母様に遺言書を作成してもらいましょう。遺言書がなければ,法定相続分での分割になります。もちろん,相続人全員で協議し,法定相続分と異なる分割をするのは自由です。しかし,相続人のうちひとりでも反対すれば法定相続分での分割になります。前述の事案では,少なくとも,お母様と暮らしていたお家は,自分が受け取るという内容の遺言書を作成してもらうべきでしょう。これについてはお母様もそのつもりでしょうし,相続人の反対も少ないのではないでしょうか。残りの預貯金の配分が問題です。お家の価値次第ですが,すでにお家の価値だけでも明らかに貰い過ぎの場合は,預貯金については遠慮するのが無難かもしれません。それでもお母様が,何かと時間を割いてくれたことや費用負担をしてくれたことに配慮して,預貯金についても多めに渡したいと考えてくれた場合には,お母様の意思に沿った内容の遺言書を作成してもらえば良いのです。あくまで,お母様が希望すれば。よく,遺言書は相続人が作るものと勘違いされている方がいますが,遺言書を作るのはお母様です。
4 後見について
後見は,認知症になったお母様名義の財産を活用する必要があるならば検討しましょう。遺言書の内容からして,自分が費用負担しても余りある相続が期待できるならば,お母様の経済的負担を一挙に引き受けることも考えうるでしょう。しかし,相続はいつ発生するか未定です。その間,お母様の費用を負担し続けることは現実的ではありません。また,遺言書の内容はお母様が自由に書き換えられますので,相続の内容も未定です。やはり,お母様名義の財産を処分するなりして活用し,お母様の費用支出はお母様の財産から行うべきです。その際,お母様が認知症であれば,お母様名義の財産を処分することができませんので,後見人を付けることになります。認知症になる前であれば任意後見も利用できます。
※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。
今回の記事をPDFファイルでご覧いただけます。