[53]民間の調停制度を知っていますか

平成30年1月20日

弁護士   藤 野  恵 介

1 はじめに

私は,弁護士になって直ぐから,民間総合調停センター(以下「民調」)という公益社団法人の運営委員をしています。民調のことを知らない方が多いのではないかと思い,紹介させていただきます。

2 立会人?

「法律の専門家である弁護士に間に入って仲裁して欲しい」と依頼されることがあります。弁護士がそのような中立的な立場にあると信頼されていることは有難いのですが,弁護士は裁判官のような第三者ではありません。弁護士は,一方当事者から依頼を受けて着手金をいただいて働くわけですから,一方当事者の代理人です。

3 裁判沙汰

第三者に判断してもらう方法としては,裁判があります。裁判は,第三者である裁判官が,公平な立場で,どちらの当事者の言い分が立証できているかを判断します。

4 ADR

裁判外紛争解決手続のことをADRといいます。裁判以外で第三者に間に入ってもらう手続のことです。交通事故専門ADRや建築紛争専門ADRや金融商品専門ADR等色々あります。私が運営に携わっている民調は,特に取扱分野に限定はありません。

5 あっせん人

民調では,申し立てられた事案に応じて,名簿の中から3人の専門家があっせん人として選ばれます。名簿は,弁護士,建築士,司法書士,医師,不動産鑑定士,土地家屋調査士,税理士,宅建士,臨床心理士,社会福祉士その他色々な団体から推薦された専門家で構成されています。例えば,医療過誤事案であれば,あっせん人のうち1人は医師が選ばれることが多いです。建築工事に不備がある事案であれば,建築士が選ばれることが多いです。介護事故の場合には,社会福祉士が選ばれることが多いです。

6 和解

3人のあっせん人が,交互に当事者から意見を聞き,和解を目指します。当事者は,交互に部屋に入り,30分ずつ入れ替わりながらあっせん人と話しますので,当事者同士が顔を合わせることはありません。

7 利点

このように,専門家が間に入る点が利点です。これを裁判で解決しようとすると,それぞれが自分に味方してくれる専門家を雇うことになりお金がかかりますが,民調では,最初からあっせん人として専門家が入ってくれていますので,別途費用はかかりません。また,裁判官は特定の分野の専門家ではありませんので当事者の主張を正確に理解できないことがありますが,この点でも,各分野の専門家があっせん人として入ってくれていますので安心です。

8 広報不足

民調は大阪弁護士会館1階にあります。しかし,残念ながら,大阪弁護士会所属の弁護士にすらあまり知られていません。広報不足です。

 

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。

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