[54]民間の調停制度を知っていますか(その2)

平成30年2月20日

弁護士   藤 野  恵 介

1 ネーミング

「民間総合調停センター」(以下「民調」)は,以前は「総合紛争解決センター」という名称でしたが,平成27年12月に名称変更しました。なかなか認知度が上がらないため行った苦肉の策でしたが,未だ認知度は上がりません。

2 税理士も知らず

先日,税理士と話す機会がありました。雑談の中で民調について話したところ,まったくご存知ありませんでした。税理士会は,民調にあっせん委員を派遣していますし,運営にも携わっているのですが,その税理士は,名前も聞いたことがないとのことでした。逆に,その税理士からは,「顧問先からの相談があったときに,そちらを紹介してもいいのですか」と質問されました。

3 消費生活センター

先日,消費生活センター相談員を対象に,研修を行いました。これも,民調の活動を知っていただくためのものです。消費生活センターでは,消費者からの相談を受け,相談に回答したり事業者とのあっせんを行ったりしています。しかし,消費生活センターには馴染まない相談もあるとのことで,そのような場合に民調を活用していただけるように広報したつもりです。

4 弁護士も知らず

民調は,大阪弁護士会館1階にあります。当然ながら,弁護士は,研修や委員会活動等,何かと弁護士会館を利用するわけですが,その弁護士ですら知りません。名前くらいは聞いたことがあるといったところでしょう。

5 メリット

民調のメリットは,何と言っても費用面です。申立ては,一律1万円。解決時には解決金の額に応じて数万円の解決手数料が必要です。弁護士をつけずに自ら申立てを行い解決に至れば,費用負担はこれだけで済みます。

6 もし訴訟なら

例えば,注文した住宅に雨漏りがあったとします。これを,建築工事の過程に問題があると主張して訴訟提起した場合,まずは,自分の側で資料作りをしなければなりません。事実を整理して建築の専門家ではない裁判官に伝えるには,弁護士に訴状等の作成を依頼する必要があるでしょう。また,残念ながら弁護士も建築の専門家ではありませんので,ブレーンの建築士に鑑定をお願いする必要があるでしょう。弁護士と建築士に支払う費用を覚悟する必要があります。

7 民調なら

あっせん人として,専門家が3人選ばれます。1人は弁護士です。あとは,建築の問題であれば,建築士が入るはずです。あっせん人は,味方してくれるわけではありませんが,専門家の意見を聞くことはできます。専門家があっせんしてくれるなら従うという方は,けっこういるものです。

 

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。

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