[56]AI登場で弁護士は失業するでしょうか

平成30年4月20日

弁護士   藤 野  恵 介

1 評価様々

「AI時代到来で弁護士大量失業」という見出しが出たかと思えば,「AI時代到来でも生き残る業種」として,弁護士が挙げられていることもあります。皆様はどう思われますか。恥ずかしながら,私自身,AI時代なるものがどのようなものを指すのか把握できていませんが,弁護士の仕事紹介になると思い取り上げてみました。

2 弊所の業務

これまでにも,当コラムにて私の仕事内容についてはお伝えしてきましたが,これはあくまでも弊所での話です。私は,同期の弁護士と小さな事務所を経営しています。弊所の場合,民事訴訟も刑事訴訟も受任しますし,民事事件の中でも特定の分野のみではなく,建物明渡,建築瑕疵,交通事故,遺産分割,遺言作成,離婚,労働,その他様々な事件を受任します。私の感覚では,機械的に処理できる事案はありません。

3 特定分野なら

弊所のような何でも屋ではなく,特定分野に特化した事務所もあります。例えば,過払金請求や交通事故保険金請求に特化した事務所です。これらの事件は,処理方法がある程度定型化されています。過払金請求であれば,過払金がいくら発生するかは,典型的な事案であれば過払金計算ソフトに入力すれば金額算定できます。あとは,消費者金融と交渉をするのみです。また,交通事故保険金の金額も,典型的な事案であれば,計算方法が確立されています。あとは,保険会社と交渉するのみです。しかし,これらの分野であっても,事案によって状況は様々です。どれだけ典型からはみ出した事案をフォローできるようになるか,そこがAIに期待されるところでしょう。

4 契約書作成

顧問先から依頼される業務も様々です。契約書作成や契約書チェックについては,既にAIを導入している企業があるようです。しかし、細かいニーズに合わせた契約書作成や契約書チェックをしようとすると,ニーズの把握という点で人間が必要でしょう。

5 判例検索

現在は,依頼者の主張が裁判所で認められるかどうかを知りたい時,似ている判例を探します。その際に利用するのは,判例検索サービスです。検索にあたっては視点が必要です。争点,法的観点または特徴的事実等,いろいろな視点の中から選択し,検索します。この過程をAIが担えるようになるのでしょうか。

6 結論

ごくごく単純な機械的作業を繰り返している弁護士がいるとすれば,その弁護士の業務はAIに取って代わられるのでしょう。しかし,我々の仕事は,事案により,または依頼者により様々ですので,まだまだ人間が活躍できると思います。

 

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。

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