平成30年6月20日
弁護士 藤 野 恵 介
1 ネット広告
「電話での相談可能」「メールでの相談可能」といった広告を見かけることがあります。私の加入している大阪弁護士会でも,メールによる法律相談を始めました。弁護士に相談したいと思ってもどこに電話すれば良いのか知らない方がほとんどですので,とても意味のあるサービスだと思います。
2 弊事務所の場合
私の場合、当コラム読者の皆様,顧問先及びご紹介の方に関しましてはメールや電話による法律相談も受け付けています。しかし,その他の方につきましては,原則お断りしています。メールや電話では情報量が不足しがちであるという理由もありますが,それよりも,相談者の雰囲気が掴めないのが大きな理由です。
3 通常の法律相談
そもそも,回答の前に,相談者のニーズを把握するところが難しいと感じています。相談者は一応の質問事項をまとめて来るのですが,実は聞きたいことは全く別のところにある場合が多々あります。また,質問自体が誤りであり,その質問に回答しても解決に繋がらない場合も多々あります。話す相手が欲しいだけという場合もあります。相談時間30分のなかで,周辺事情を聞いたり,雑談をしたりしながら回答らしきものを探していきます。自分の回答が相談者の満足に繋がっているのかどうか些か疑問ですが,毎回,そのような工夫をしつつ法律相談にのぞんでいます。
4 伝える難しさ
相談者は色々な想いを持って来ます。相談室に入るなり怒っている方もいれば,悲しんでいる方もいます。怒っているような口調ですが,実は困っているだけの方もいます。回答する際には言い方にとても気を遣います。相談者の中にはセカンドオピニオンを求めて来る方もいます。そういう方からよく聞くのが,最初に相談した弁護士から「無理だと言われた」「請求できると言われた」という報告です。相談を受けた弁護士は,様々な条件をつけつつ回答しているはずですが,受け取る側は都合の良い情報だけを記憶しているものです。私の場合,なるべく冷静な判断ができるように回答しますが,それは公平な表現を用いればよいという単純なものではありません。思い込みによる誤解を与えないよう,雰囲気を見ながら言葉を選びます。相談者に「そんな言い方しなくてもいいのに」と思われないように。
5 メールでは困難
このように,私の能力ではメールや電話による法律相談をお受けできません。言葉足らずが原因で,却って相談者とトラブルになるリスクがあると思っています。何らかの信頼関係が必要なのでしょう。
※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。
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