[59]災害時に弁護士にできること

平成30年7月19日

弁護士   藤 野  恵 介

1 災害時

大阪北部地震や西日本豪雨といった災害が立て続けに発生しています。救助隊や医師は当然のことながら,我々士業の中でも臨床心理士が現地で心のケアにあたるといった活動をしているようです。では弁護士にできることはあるのでしょうか。実際に被災された方に今回のコラムを読んでいただけているとは思いません。もし,今後自分が被災したらという視点でご一読いただければ幸いです。

2 無料相談

弁護士会のなかには,無料電話相談を行っているところがあります。また,各自治体でも無料相談を行っているところがあります。

3 利用できる制度

各自治体から災害弔慰金や災害障害見舞金が支給されることがあります。また,保険のなかには,災害が原因であっても何らかの保険金が支払われるものもあります。被災ローン減免制度によって,事業ローン等の免除や減額を受けられるかも知れません。自然災害債務整理ガイドラインに沿って債務整理が行える余地もあります。この場合,弔慰金や保険金等を手元に残しつつ債務整理できるかも知れません。

4 制度利用の順序

これら制度の利用にあたっては,順序に注意してください。せっかく得た保険金等を返済にあててしまっては手元に何も残りません。まずは,返済を免除してもらえないか,免除が難しい場合でも減額してもらえないか,減額すらしてもらえない場合でも返済を待ってもらえないか。要するに,債務をできるだけ圧縮したうえで返済を検討するという当然のことを実行する必要があります。私が相談を受けてきた経験上,これまでしっかり遅滞なく返済してきた方に限って,まず返済にあてる傾向があります。それ自体は素晴らしいことですが,せっかく制度が設けられているのですから,遠慮なく利用しましょう。

5 証拠の保全

現状を写真に撮っておく必要があります。前記の各制度を利用するにも,必ず資料が必要です。片付ける前に,まず写真撮影してください。「写真なんか撮ってないで急いで片付けないと」と思うかも知れませんが,携帯電話で撮影できるはずです。せっかくの制度も,申請手続で躓いては意味がありません。我々が申請のお手伝いをするにも,資料がなければ動けません。

6 契約関係

災害発生の場合,その原因は契約当事者にはありません。債務者の責任ではなく債務が履行できない場合に,契約当事者がどのような負担を負うかという問題は「危険負担」と呼ばれています。契約書には,通常,危険負担に関する規定があります。原則はそれに沿って処理することになります。

 

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。

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