平成27年10月26日
弁護士 藤 野 恵 介
答え 民間運営のものがあります。
1 ADRとは
裁判外紛争解決手続のことをADRといいます。私の所属する大阪弁護士会内には、紛争解決センター(平成27年12月より民間総合調停センターと名称変更)というADR機関があります。そこでの和解あっせん手続が、裁判所での調停手続の民間版といえるものです。調停委員の代わりに和解あっせん人が協議の場を取り仕切ります。
2 調停との違い
ADRに裁判所は関与しませんので,いわゆる「裁判沙汰」にせずに済むという点が大きく違います。しかし,我々弁護士からみてより重要なのは,ADRの和解あっせん人は、全員が有資格者である点です。ご存じない方が多いのですが、裁判所の調停において協議の場を取り仕切る調停委員は、必ずしも何らかの資格を持っているわけではありません。もちろん、調停委員の中には、弁護士もたくさんいます。しかし、必ずしも全員ではありません。調停委員には、専門的な判断が求められるのではなく、協議の場を取り仕切る力が求められているからです。他方、ADRの和解あっせん人には、専門的な判断が求められます。
3 大阪での取組
どうしても大阪の話になり恐縮ですが、特に大阪の紛争解決センターは、他県のものと異なり、各士業団体が協力して運営しています。各士業団体から選出された和解あっせん人が、協力して解決にあたる点で制度上はとても進んだものになっています。例えば、建築関係の協議が必要な場合には、和解あっせん人として建築士が選出されます。また、不動産の問題であれば司法書士、宅建士または土地家屋調査士が選出されます。医療の問題であれば医師が選出されます。このように、専門家が積極的に関与し、積極的に和解案を提示することで、原則として3回の期日での和解を目指しています。
4 課題
しかし、ADRはまだまだ浸透していません。おそらく権威づけができていないからでしょう。協議の場を設定したいと考える申立人にとっては、まずは相手方を協議の場に引っ張り出せるかどうかが重要です。その手段として,ADR機関からの呼び出しでは心許ないということです。やはり多くの方は,裁判所から相手方に対して呼出状を発送して欲しいと思っています。
5 弁護士の理解不足
実は、我々弁護士の中にも、まだまだADRは浸透していません。我々弁護士も,依頼者と相手方との間で協議が必要と判断した場合,裁判所へ調停を申し立てるのが一般的です。そして,裁判所へ申し立てたはいいものの,一向に話がまとまらず専門家に差配して欲しいと考えることも少なくありません。
※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。