[10]労使関係に介入する第三者

平成26年3月24日

弁護士   藤 野  恵 介

答え

労基署と組合と弁護士

1 よくある相談

弊所のような個人事務所では,労使どちらからも相談を受けます。労働者からの主張で多いのは,解雇無効と残業代不払です。会社からの相談は,労働者からの主張に対する対応です。

2 介入する第三者

一般の労働者には,1人で使用者と戦う力がありません。そこで,労働者は第三者に相談することになるのですが,相談相手としては,労働基準監督署,労働組合そして弁護士が考えられます。

3 3者の違い

3者には,できることに違いがあります。労働基準監督署(以下,労基署)は,会社に対して指導し,話合を斡旋することができます。労働組合は,会社と団体交渉することができます。弁護士は,裁判所において訴訟または労働審判を起こすことができます。

4 弁護士の回答

私が相談を受けた場合,まずは労基署の無料相談をお勧めすることが多いです。なぜなら,労基署によって様々ですが,無料で残業代計算方法を教えてくれたり,職員が会社へ行って交渉してくれたりすることがあるからです。そうはいっても,前述のとおり,労基署ができるのは指導や斡旋ですので,会社が反発した場合には労基署では解決できません。その際には,労基署の方から,弁護士へ相談するよう勧めているようです。労基署から勧められて相談に来られた場合には,解雇無効または未払残業代支払を求めて訴訟または労働審判の準備をすることになります。

5 労働組合

労働組合には,会社ごとに組織されたものもありますが,そのような組合のない労働者のために,地域労組というものもあります。したがって,労働組合がないからといって,労働組合との団体交渉がないわけではありません。労働組合は,労働者を代理して会社と交渉にあたります。しかし,交渉がどのような方向へ進むか,また,労働組合へ支払う費用の体系も労働組合により様々ですので,弁護士から勧めることは少ないと思います。

6 会社側の対応策

現在,労働者は守られています。解雇理由にせよ,残業代計算にせよ,ひとたび紛争化すれば会社側に説明が求められます。したがって,会社側は,紛争化する前に相談すべきです。弁護士でなくても労基署に相談する方法もあります。労基署は会社側の相談も受け付けます。なぜなら,労基署は適法に労務管理されているかを監督する機関であり,適法な解雇や残業命令は会社に当然に認められている権利だからです。

※なお,ここでの記述は,あくまでも私個人の意見ですので,その点,ご了解ください。